出版社よりお取り寄せ(通常3日~20日で出荷)
※20日以内での商品確保が難しい場合、キャンセルさせて頂きます
この本は元々,新興医学出版社から出版されている雑誌Modern Physicianの創刊30年記念特大号(2010年1月)の企画を基に製作されました.雑誌特集の時の倍にQuestionを増やし,執筆者はおよそ80人にも上ります.
Questionに対するAnswerは,3つに分けることにしました.すなわち,1)知っておきたい基本知識,2)少し詳しく,そして3)じっくり学ぶ・文献です.急いで項目についての知識を得たい時には1)だけ読めば十分です.1)~3)まで読みとおしても,それほど時間はかかりません.内容は高次脳機能理解のための,基礎知識・症候・トッピクスの3つの部分に分け,基礎知識とトピックスを「基礎編」,症候を「症候編」として2巻に分けました.執筆をお願いした先生方は,医学部名誉教授の大先生から私の教室の大学院生まで幅が広く,バックグラウンドも神経内科,精神神経科,リハビリテーション科の医師だけでなく,ST・OT・PTや心理の立場の先生方も多く,多彩です.しかし,これらの先生方は皆,共通して「日本神経心理学会」や「日本高次脳機能障害学会」でご活躍なさっている方々です.執筆者の専門性を第1に重視して,テーマを選択いたしましたので,どの項目もわかりやすく書けていると思います.
ところで,Jacksonの失語に関する最初の論文をご存知でしょうか.彼が故郷のヨークからロンドンに出てきて神経疾患患者の診療に従事して3年目の1864年に若干29歳でまとめた論文です.この論文は「London Hospitalの内科および外科スタッフによる臨床講義と報告 第1巻」に載っており,「言葉の喪失(Loss of speech).それと心臓弁膜疾患,右片麻痺との関連--嗅覚欠損--ヒョレアにおける言葉の欠損--てんかんにおける動脈支配領域」という長ったらしい題名が付いています.この本は私がもっとも大切にしている蔵書の1つです.この論文には34例の失語症例の病歴と考察が書かれています.随所にBrocaが引用され,彼に対する敬意が示されていてほほえましいぐらいです.このことはあまり知られていない話です.むしろ,Jacksonは後に徐々にBrocaに対して批判的になり,彼独特の失語理論を生み出していったことのほうがずーっと有名です.
この本は,Q & Aという形式を取っており,読むのが大変にならないように工夫しましたが,内容は実は重厚です.とくに若い,まだ初心者の読者には,最初から全体を通して読むことをお勧めします.そうすると,脳の高次脳機能についての全貌を知ることができるはずです.この本に書かれていることを参考にして経験を積み,JacksonがBroca理論と葛藤したように,この本に書かれている事実を確認し,さらに乗り越えていただくことを期待したいと思います.
2011年8月 昭和大学神経内科 河村 満
(序文より抜粋)
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。