永遠の猫・ミンミンと

永遠の猫・ミンミンと

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出版社
展望社(文京区)
著者名
佐山透
価格
1,676円(本体1,524円+税)
発行年月
2011年7月
判型
A5
ISBN
9784885462320

ある夫婦と猫のエッセイ 猫と生きた日々
庭に迷いこんで鳴いていた子猫――わが家のハンサムな宝物として大きくなった。
パームスプリングス、ニューヨークはトライベッカからイーストビレッジ。日本に移って世田谷の桜上水、湾岸トヨス。猫といっしょのしあわせだった情景を綴る。

「第一章 舞い降りてきた天使」より抜粋
そのときのこと私たちは忘れることはない。永遠に。
1994年。私たちはアメリカに住んでいた。カリフォルニア州のパームスプリングス。

十月のある日の午後だった。
ゴルフから帰ってきたときだったか、それとも書斎でしばらくのときを過ごして庭に出てみたときだったろうか。
すでに庭に出て、プールサイドの椅子で本を読んでいた未紗が、私を振り返って、手のひらで、しっ、と制した。首をかしげて耳を澄ましているようすだ。私も神経を集中する。
なにか聞こえるのか。なにかがいるのか。
あ、聞こえる。
どこかで、かすかに、ミンミンというか、ミッミッというか、鳴き声が聞こえる。小鳥なのか、虫なのか、それとも、いや、それは猫の鳴き声だった。しかも子猫だ。
デザート地帯には多くの動物が住んでおり、中には猫そっくりな鳴き声の主もいるのだが、間違いない。聞こえているのは紛れもなく子猫の声だった。
私たちは顔を見合わせて、未紗は椅子から起き上がり、私はタイルの庭に歩を進めた。
ミンミン、ミッミッという声は続いていたが、どこから聞こえているか。すぐ近くのようでもあるし、うんと遠くから聞こえているようでもあった。
わからないまま、未紗はその場にしゃがみ込み、両手を前に差し出し、そこに猫がいるかのように、自分でもミユーミユーと鳴きまねをしてみた。
まさにそのときだった。
庭の向こう側、私たちのベッドルームの外側の、壁に沿って並んでいる低い植え込みの中から、一匹の小さな猫が現れたのだ。
小さな猫は、その小さな身体を揺すって、ぽんぽんと弾み、私たちのほうにまっすぐに走ってきた。
未紗が差し出した両手にぶつかるように、その手の中に飛び込むように、小さな猫は私たちの暮らしの中に入ってきたのだった。

「あとがき」より抜粋
一年近く書き続けてきた『永遠のミンミン』がこうしてまとまり、本になりました。
書いていた一年、私はミンミンと一緒にいました。
あんなこともあった。こんなこともあった。
ミンミンとともに出会ったさまざまなできごとや、たくさんのひとたちが、ミンミンと一緒に思い出の中に現れてきました。
そして、書いているうちに心に芽生えた後悔と反省。
旅から旅への人生、などと格好をつけて、ミンミンに寂しい思いをさせてしまった。 もっともっと長い時間、ミンミンと一緒にいればよかった。

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