100年の残影

100年の残影

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出版社
彩流社
著者名
栗原達男
価格
4,180円(本体3,800円+税)
発行年月
2011年7月
判型
B5
ISBN
9784779116360

よみがえる100年前のアメリカ西部の姿!

“フランク ”と呼ばれた稀有の写真家の足跡を追ったフォトドキュメンタリィ。

収録写真290葉(内松浦栄の100年前の写真96点)

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フランク・マツーラの痕跡を求めて 序にかえて    岡井耀毅



 初冬のある日、私は東京・半蔵門のJCIIフォトサロンで催されている栗原達男写真展「松浦栄(まつらさかえ)のオカノガン・100年」(2010年10月30日~11月25日)を見た。

 会場には、このほとんど知られていない先駆的な写真家の苦心の写真アメリカ大西部開拓の残光の中に息づかいをあらわに立ち上がっていた。ワシントン州の奥地オカノガン峡谷の閑散とした街や村々の庶民風景だが、じっくり見ていくうちに百年の歳月をへだてていて、それらの写真が遠い異国の昔の風物であるにもかかわらず、身近にあるものとして、やさしく語りかけるような懐旧の情感をたたえてくるのに驚いた。それは、けっして単純に過ぎ去った時間の重みが発信してくるだけのことではなかった。

 たとえ太平洋をへだてたアメリカの辺境の地とはいっても、その地で生涯を終えた写真家の血流の淵をのぞき込む感慨がひとしおであったためか。あるいは、フランク・マツーラと名乗った松浦栄の写真を、抱きしめるように、溶け込むように、混じり合って併展されている栗原達男の松浦思慕ともいえる熱情的な追跡の情念に胸を打たれたせいであったのか。

 栗原達男はまず、松浦が20世紀元年の1901年(明治34年)春に上陸したシアトルの街の現場に立ち、松浦がたどったコロンビア川をさかのぼり、支流オカノガン川の船着き場まで徹底的に追跡する。そして、残された数少ないシアトルの町の松浦の写真から推測して彼の暮らした痕跡をさぐるように撮り、さらにオカノガンでの松浦の写真と同じ現場に立って定点的な撮影をつづけていった。幼少の頃に松浦を目撃した生存者をたずね、松浦の大ファンに会い、銀山開発で活気があった当時を偲ばせる情景とだぶらせて現在の街景や風物を撮り収めているのだ。

 興味深いのは、松浦栄が残したオカノガン周辺の写真に、1909年(明治42年)の頃、オカノガン川畔にできた野球場でプレーする村人たちが写っており、いち早く当時、アメリカに野球ブームがゆきわたっていたことを示している。それから約百年後にイチローが渡米して、松浦がスタートした同じシアトルで大リーグデビューをするという奇縁もなにか運命的な符号のように思えてならないのだ。



松浦栄・その人物像

 いったい松浦栄とは、どんな人物だったのか。松浦栄は1873年(明治6年)、東京・向島に生まれている。明治維新で没落したが、旗本与力の家柄だった。

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