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序 文 過去10年余り,わが国の抗アルツハイマー病薬としては,コリン欠乏説に基づいて開発されたコリンエステラーゼ阻害薬(ChE―I)であるドネぺジル(donepezil)しかありませんでした。ChE―Iは,コリン作動性ニューロンの進行性の脱落とそれによる脳内AChレベルの低下が,アルツハイマー病における認知機能障害の原因の一部であるという仮説(ACh仮説)に基づいて開発されました。AChEはAChを加水分解する酵素ですから,その阻害によりAChレベルが増加し,ACh系伝達が改善するはずだと考えられて開発されたのです。世界最初のChE―Iとしてタクリンが,続いてわが国からドネぺジルが登場しました。さらに欧米を中心にガランタミン(galantamine)とリバスチグミン(rivastigmine)も流通するようになりました。ところが外国では治験において有意な成績を残して,さほどの難なく上市されたこれらの薬剤ですが日本上陸は容易でありませんでした。この点について,様々な論議がなされました。そして最近のグローバリゼーションやハーモナイゼイションという世界の趨勢の中で,わが国の治験システムはどうあるべきかという観点が大きくクローズアップされたのです。こうした紆余曲折を経て2011年から,2つの新たなChE―Iであるガランタミンとリバスチグミンが流通するようになったのです。またグルタミン酸を介する神経毒性が関与するという考えに立つNMDA受容体拮抗薬であるメマンチン(memantine)も処方が可能となりました。 そのような状況において,認知症の治療にあたる医師は何を求めるでしょうか? この考えに立って編集されたのが本書です。なにより個々の薬の特性を知って,目の前の患者さんの病態・症状に最も望ましいと考えられる薬剤を選びたいと考えられるはずです。特性とは具体的に,適応となるADの重症度でしょう。これは4種類の薬剤ごとに少しずつ異なります。次に,何より臨床家には認知機能ばかりでなく,精神症状や行動異常(BPSD)や日常生活動作(ADL)へ目配りも求められます。ですから最も知りたいのは,これらへの薬剤の効果個性,平たく言うとそれぞれが得意とする標的症状ではないでしょうか。それもできればエビデンスベースという保証付きで。 本書はこのような立場を基本として,しかも各筆者が,自分が臨床の場で使うつもりになって,「すぐに役立つ」をモットーに執筆されました。各章では,まず4剤の特徴についてのエッセンスがあります。次いでそれぞれについて詳しい説明をして,最後にメタアナリシスで締めました。さらにBPSD対応を意識して,その総論と漢方薬,その他の薬剤の章も設けました。いずれもパッと見た目にわかりやすいように図表を多く用いました。このような構成と内容は必ずや臨床現場で読者の皆様のお役にたつと信じています。どうぞ本書をお手に取られて,日々の認知症診療にお役立てくださいますよう。 平成23年5月 朝田 隆
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