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詩を愛し本に遊ぶ最後の文人学者 富士川英郎の高雅な世界
独文学者が五十代半ば過ぎて著した『江戸後期の詩人たち』。日本に漢詩人ありと知らしめ、読書界を驚倒させた著者が、以後堰を切って上梓した文学随想から二九篇と詩三篇を精選。リルケ、ゲーテらドイツの詩人、菅茶山始め江戸漢詩人と並び、幼い頃、市電で乗り合わせた「神采奕々」の老紳士森鴎外を追想する「父富士川游のこと」、愛してやまぬ萩原朔太郎を語る「郷愁の詩人」など、“最後の文人学者”富士川の悠々闊達な世界。
高橋英夫
文人の拠って立つ詩、詩文と、学者の拠りどころ学問とは、近くもあるが隔り、ずれもある。次元が違うともいえよう。ところが僅かな幾刻か、微妙なタイミングによってなのか、詩文と学問とが重なり合うことがときどきある。ただ、重なりによって濁りは生ぜず、結ぼれがほどけたような晴れ晴れとした気圏がそこに拡がる。そういう気圏を感知し、その気圏の中に立ちつくす人、それが文人学者であろう。――<「解説」より>
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