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1944年,フォン・ノイマンとモルゲンシュテルンにより『ゲームと経済行動の理論』が刊行され,ゲーム理論はその全貌を現した。それまで経済学は個別主体の最適化は扱えても,主体が集まった社会で何が起きるかを数学的に分析する術がなかった。そのとき「社会の数学的分析」の道具として開発されたのがゲーム理論である。ゲーム理論の出現は新しい数学分野を開拓し,社会科学を最先端の科学に引き上げた画期的な事件であった。
ゲーム理論の対象としては複数の意思決定者が存在して社会を構成し,彼らの意思決定が結果に直結する状況が,数学的,論理的分析に最適である。その場合,意思決定者は各自独立に意思決定し行動するか,複数の意思決定者が一つのグループとして行動するかの二つに分けられる。本書は前者の各自の意思決定と行動を分析する非協力ゲームを対象とする。これは複数の意思決定者の間で拘束的な合意が形成できないことを意味する。
ミクロ経済学では意思決定者である企業や消費者の間で拘束的な合意ができない状況が現実的であり,非協力ゲーム理論の応用にも適している。
著者は理論的な学問は完全に分かるか,分からないかのどちらかしかないと考える。完全に分かるとは用語を正しく理解し,理論の主張に至る論理をすべて理解することである。本書は完全な理解を目指し,厳密な理論を分かりやすく説明するため,表現上の工夫や事例に配慮し,多様な練習問題により確実な理解への道を示す。
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