取り寄せ不可
明治末から大正期。
「口語自由詩」という新たな詩の原理はこうして模索された。
明治十五年『新体詩抄』により、西欧近代詩を範例とする新体詩として成立した日本の近代詩。
やがて口語自由詩という新たな詩の様式が提唱され、詩壇の主流をなしてゆく。
この転換期にあたる明治末から大正期、定型を脱した新たな詩形の成立によって、旧来の詩の存立を支えた根拠が喪失し、詩人たちは〈詩〉の在りかの探究を強いられてゆく。
高村光太郎、室生犀星、萩原朔太郎、三富朽葉の四人に焦点をあて、〈詩〉の在りかを求める詩人たちの多様にして個性的な試みを辿る。
【 しかしながら口語自由詩の成立は、単に日本の近代詩に「根本的革新」をもたらすものであった訳ではない。文語と定型という形式は、明治に於いて新たに生み出された「新体詩」の存立を支え、散文との差異を自明化する詩の〈枠〉に他ならなかった。従って文語と定型を拒絶する口語自由詩の提唱とは、旧来の詩の存立を支えていた根拠の喪失という事態を招来したのであり、日本の近代詩に極めて大きな混乱と混迷を引き起こしたのである。換言すれば、当時の詩人たちは、口語自由詩が散文ならぬ詩として成立することを保証する新たな詩の原理の模索を強いられることとなった。口語自由詩に於ける詩の「自由」が不可避的に招き寄せた近代詩のアポリアがそこに出来する。近代詩は、口語自由詩の成立によって深い曲折を余儀なくされたのである。
本書が以下に辿ろうとするのは、そうした口語自由詩の時代に於ける〈詩〉の在りかの模索という困難な試みを重ねた詩人たちの姿に他ならない。】......本書・はじめにより
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