近年、わが国では、安全・安心に対する関心が非常に高くなり、安全確保のための対策が多く施されている。しかし実際には、人命を脅かす事故や災害が頻発しており、それらは甚大な人的損失や物的損失をもたらしている。安全の確保は世界共通の関心事であるが、わが国と欧米諸国とでは安全対策についての取組みに大きな隔たりがある。つまり、わが国では、安全対策の基本を安全教育による人間のミスの防止に置いているが、欧米諸国では、人間のミスや機械の故障があっても事故や災害に至らないための対策を取り、それでもカバーしきれない部分についてのみ安全教育に依存している。欧米流の方が安全確保の観点から合理的であり、現在、この考えに基づいた安全規格が国際標準となっている。これまでわが国では、いかに合理的に安全を確保するかについて、一般的には十分議論されていなかった。しかし、近頃、欧米流の安全確保の手法が浸透しつつある。本書では、国際標準となっている欧米流の考え方をベースとして、安全確保の合理的な手法について概説する。
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