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トマス・アクィナスの師であるアルベルトゥス・マグヌスは従来,ただの百科全書家で,アリストテレスと新プラトン主義の思想を折衷したにすぎないと低い評価に甘んじてきた。
本書はアルベルトゥスにより自然学の基礎づけと考えられていた限りでの彼の感覚論を考察する。彼によれば,人間知性が学問的知識を感覚への振り返りによって感覚から集めることにより,感覚認識を起源として自然物の実体形相を認識し,自然の定義を含む自然物についての学問的真理を認識できるとして独自の見解を示している。
アリストテレスを基礎に新プラトン主義の影響下,アヴィセンナのアリストテレス註解をも視野に収めつつ,アルベルトゥスが感覚認識を高く評価したことは当時の哲学的文脈のなかでも貴重な貢献であった。
わが国で初めてのアルベルトゥス・マグヌス研究である本書は,原典に即した詳細な分析とあいまって,中世思想のみならず広くヨーロッパ思想を考察する上でも新たな扉を開く画期的業績である。
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