(序文より)
医療をめぐる環境は、近年、激動しているといってよいであろう。特にこの10年間に、医療現場における事件・事故の報道は日本中に「医療不信」の風を巻き起こし、その後、医師不足が顕在化し、医師の過労死が問題となるような「医療崩壊」の時を経て、現在は「医療再生」に向けての取組みがなされる時代となってきている。医師の数や業務分担のあり方についても話題となっているが、医療が患者と医療従事者の協同で出来上がるものであるという視点からも、関係者のコミュニケーションと連携が必須であり、とりわけわれわれ医師の立場からみて、医師・患者間の信頼が医療再生の基本となる。本書は、まさに医師・患者間の信頼を取り戻し、より良い医療につなげ、そして医療を再生させるための礎となるものであろう。
患者との信頼感構築のために、どのようなことが患者との争いになり、そしてその状況で医師はどのように対応すべきであったか、すなわち、不信を招くような状況にならないためのポイントを正確に把握することは、われわれ医師にとって必須の知識であろう。本書は、これまでの医師・患者間の争いの最たる状況である訴訟事例を簡潔に紹介し、そして、臨床医および法律関係者の視線もあわせながら、臨床現場でのクリティカルポイントを考えるものであり,日々の診療に多いに役立つものではなかろうか。
判決文というとかた苦しいイメージがあるが、本書では、1事例ずつコンパクトに、かつ、コンサイスにまとめてあり、忙しい臨床の合間を縫っても読める構成となっている。多くの医師に本書を手に取って読んでいただき、患者とともに医療従事者をも苦しめる医療事故・トラブルが減少することにつながることを心より期待している。
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