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スピノザは人間精神に可能な認識を三種類に分類した。第1種の認識に「臆見」もしくは「想像」,第2種に「共通概念」もしくは「理性」,第3種に「直観知」を配した。第1種の認識はすべての「非妥当的な観念」が属し,「虚偽の唯一の原因」である。これに対して第二種,第三種の認識は「妥当な観念」に属し,「必然的に真」である。第1種の認識と第2種,第3種の認識のあいだには断絶があるとした。しかしスピノザは他方で如何なる観念も神のなかにあり,「すべての観念は神に関係するかぎり真である」という根本主張もしている。
著者はこれら認識のもつ複雑な構造を,「共通概念」を軸に総合的に分析することにより,スピノザにおける認識の意味を解明する。前著『スピノザ「エチカ」の研究』では共通概念に関して必ずしも真意を尽くせなかった。本書はその欠を補った姉妹編である。
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