筆者がイオンクロマトグラフィーとして分析界にデビューして35年弱、その間、新しいシステムの装置、サプレッサを含むカラムテクノロジーの進歩、イオンクロマト装置と検出部としての質量分析計の組み合わせ、種々の分離手法の導入、ダウンサイジング手法の進歩など大きな変革があった。
ところが、種々の形態の試料それぞれの試料液までの前処理操作、目的イオン種の分離に最適なカラムと溶離液とその濃度の選択、出てきた数値の信頼性評価、そしてデータ処理とただ一つの試料の数値と結果を求めるにも容易なことではない。装置システムや分離機構と検出機構には著しい発展が見られるものの、出た数値ではなく結果を読むにはこの基礎が何より大事であることはいうまでもない。
このような基礎的部分について、本書では、イオンクロマトグラフ装置を初めて使う学生諸君と分析従事者にもわかりやすいよう、特にイオンクロマトグラフィーのシステム、分離機構、カラムテクノロジー、そして熟練した分析者でもしばしば立ち往生してしまう試料の前処理とその工程について、多くの疑問にも答えられるよう詳述した。また数値の評価などの基礎部分についてはしっかり理解できるよう配慮するとともに、新しい技術、手法、応用にも多くの情報を入れ、イオンクロマトグラフの展望も見られるよう記述した。
広範囲な分野に普及し、イオン成分を主にした日常的分析手法となった現在、むしろ本書により基礎を熟知し、充分にイオンクロマトグラフィーの進歩状況も踏まえて、分析の実技と研究企画に活用していただきたいと願っている。
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