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生命現象は進化を経て適応性が高まってきたと考えられます。生命現象の進化や適応についての研究の歴史が奥深いことは周知ですが、21世紀に入って、遺伝情報、タンパク質の構造解析などの分子生物学的解析の進展も伴って、ますます、その広がりを見せつつあり、将来の遺伝情報と発現形質・機能との間の関係性の研究発展が期される時代になりました。さらに、生物学における進化や適応に関する理論的側面は、人間集団や社会の特性の理解・解釈に応用され、新しい展開も始まっています。
本書は、9人の執筆者による、生命現象、社会現象における進化や適応に関する数理モデル研究のモノグラフを編集したものです。第1章では、進化や適応の理論に関する数理モデル研究の第一人者による新しい観点も織り交ぜられながらの俯瞰が述べられています。
第2、 3章では、動物、植物における繁殖戦略、第4、 5章では、動物の行動における最適戦略、第6、 7章では、種間関係を伴う発現形質の進化についての数理生物学における理論、第8章では、人間集団や人間社会がもつ特性の進化や適応性に関する数理生物学的アプローチについて、基礎から先進的な視点までを含むモノグラフが収められています。
進化や適応の理論においては、発現形質・機能に対して、しばしば、ゲーム理論の応用に伴って広がった「戦略」という概念を適用して述べられており、本書でも、「戦略」という用語が通用されていますが、本書に収められたモノグラフそれぞれが独特の数理モデリング・数理モデルによる理論研究の世界を表現していることも読者の方々に伝わることと思います。そして、各章は独立して読むこともできますが、相互に関連性の高い内容であり、本書全体から、数理生物学分野における進化や適応の理論研究の多様な展開を垣間見ていただければと思います。また、本シリーズの巻1、巻2の内容との密接な関連性に現在の数理生物学研究における、多様で体系的な発展を感じていただけるとも思います。
本書では扱われていない多様な生物現象の問題に関する数理モデリング、数理モデル解析に対しても、本書の内容はその基礎を提供するものとして有用であるに違いありません。(序文より)
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