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初版から8年、音響技術の大きな変化をふまえつつ、芸術の本質と音響デザインの哲学を改めて語った待望の増補版
本書『オペラと音響デザイナー』の初版は、シリーズ《アーツマネジメント》の第一弾として2002年に発行された。このシリーズは、舞台の「裏方」と呼ばれる人々が、その仕事の実情つまり舞台の裏側を紹介しつつ、芸術の本質を描くというものだ。本書はその初版から8年あまりを経て、多くの読者を獲得することができ、今回増補版として新たに発刊されることになった。
この8年という年月の間、舞台における音響の技術は大きく変わり、アナログからデジタルに完全にシフトしてきた。これは舞台技術に限ったことではなく、携帯電話やコンピュータを含め、世の中も同様に大きく変わったことは、いまさら言うまでもないだろう。しかし、舞台での音響の本質は変わらない。演奏家のつくり上げた「音」を観客に伝え、届けることである。技術や手法は時代とともに進化していくとしても、この「本質」は変わりようがない。同様にオペラという、生まれてから数百年の時を過ごしてきた舞台芸術も、ほんの数年で大きく本質を変えることはありえないだろう。
増補版にあたり、あえて技術の進化にともなう書き直しは最小限にとどめている。今は最新の技術であったとしても、あっという間に時代遅れになってしまうからだ。そのかわり、オペラにおける私の音響デザインの哲学と、オペラという舞台芸術に対しての自分のスタンスという本質の部分を終章としてまとめ、大幅に筆をくわえてある。今回の増補版において、新たに音響デザインの本質を語ったこの終章が加わったことで、私の想いをまとめた『オペラと音響デザイナー』という書籍がやっと完成したとも言えるのかもしれない。
(著者 小野 隆宏)
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