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この本は、筆者が2003年6月から2007年4月までニカラグアに大使として勤務したときに経験した日本の経済協力(政府開発援助、ODA)に関する話です。とくにODAの中の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」と呼ばれる援助を取り上げます。本文ではこれを単に「草の根援助」としています。
草の根援助を取り上げる理由は、ODAの中でもこの援助は、足が速く喜ばれているためです。即ち、決定から竣工までの期間が短い、対象が地域ないし住民に密着している、結果がすぐに出て地元民に喜ばれる、日本を宣伝できるなど、援助効果が大きいからです。実際、ニカラグアでも市役所におけるゴミ収集車の整備、農村の飲料水用の井戸掘りや水道パイプラインの建設、小中学校の教室建設等で大変感謝されました。
ニカラグアは1人当たりの年間所得が約960ドルで、中南米諸国のうち、最貧国ハイチに次いで所得の低い国です。世界銀行によって同国は重債務貧困国(HIPCs)に指定されています。こうした貧困国では国家予算が極端に乏しく、インフラストラクチャー投資や社会開発への資金が大幅に不足しており、先進国からの援助が唯一の頼りです。ニカラグアでは各国からの援助が国家予算の約3割を占めています。種々の援助が行われる中で日本の草の根援助は、住民レベルに直接行き渡り、喜ばれる援助としてその特徴を際立たせています。
筆者自身この草の根援助に関係して各地を訪問しました。とくに工事の竣工式の時には、現地の式典でお祝いの言葉を述べ、地元民たちと一緒に完成を喜びました。ニカラグアには153の行政上の市が存在しますが、筆者は4年間で104の市を訪問しました。ニカラグアの大部分の地域を廻ったことになります。そこで考えたこと、学んだこと、印象などを紹介したいと思います。
なお、中米の地図とニカラグアの地図を掲載します。ニカラグアの地図で示した町は、文中で紹介する草の根案件の竣工式で筆者が実際に訪問した場所を含んでいます。
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