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「新自由主義サイクル」の下、迷走する現代日本の問題の起源を徹底解明
ワーキングプア、非正規雇用、貧困、格差社会…そこに襲いかかるアメリカ発の国際金融危機…かつてない喪失感と閉塞感―。この国はいま、1990年代の「失われた10年」に続く「もうひとつの失われた10年」を経過しつつある。
この混迷を招いたのは1980年代以来の経済自由化、規制緩和、「小さな政府」の推進、つまり今日にいう構造改革であり、それが引き起こした社会経済危機に対する急場しのぎの補正政策である。日本のこうした問題状況、そして「貧困大国」の実相がいまや広く知られるようになったアメリカの現在の混迷もまた、その究極の原点は1970年代半ば以降のラテン・アメリカに求められる、と筆者はみている。
こう述べると訝る読者もあろう。しかし南米のチリは1973年、隣国のアルゼンチンは1976年、世界初となる新自由主義の経済改革に着手している。これはサッチャー、レーガン、中曽根の諸政権による同様の試みに数年から10年近く先んじている。そしてその結果は、国際的にもよく知られた1980年代の元祖「失われた10年」であった。アルゼンチンは1990年代にもより徹底した構造改革を断行し、通貨・金融危機や大量失業など「もうひとつの失われた10年」(同国の経済学者フレンケルの表現)に陥った。フジモリ政権下のペルーなど他の国々もこうした流れに追随し、大同小異の悲劇を産み落としている。
本書はまず、この新自由主義の「悪夢のサイクル」(内橋克人)の原点をグローバルな視点から検証し直し、日本や中国などアジア諸国の「ラテン・アメリカ化」のリスクに改めて警鐘を鳴らしている。さらにラテン・アメリカにおける近年の「左傾化」のうごきやポスト新自由主義への試行錯誤、また主流の新古典派経済学に対抗するラテン・アメリカ生まれの構造派の考え方など、一連の代替案にも考察を加えている。これらを導きの糸として私たち自身の「もうひとつの失われた10年」をどう乗り超えるか。本書の刊行を機に、読者とともに考えていきたいと願っている。
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