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紀伊半島の自然相から見えてくる環境の未来、
熊野の森に半生を賭けた生態学者の講演録。
紀伊半島の生物相は「変わっている」。昔から南方系の虫と北方系の虫が入り交じって暮らしているし、高山性の動植物が標高の低いところに生息し、海岸性のものが山奥に棲んでいる。
およそ「教科書的でない」この地域を、生涯をかけてつぶさに実地調査した男がいた。和歌山県生まれの昆虫学者・生態学者、後藤伸(1929~2003)である。紀伊半島に「教科書通りでない=日本の自然本来の生物相」が残ったのは、山を活かして守った古人の叡智によるところが大きい。後藤の調査と研究には、われわれ人間が自然とどのように付き合うべきかについての多くの示唆が含まれている。後藤は「熊野の森ネットワークいちいがしの会」を組織して照葉樹林の復元に取り組み、晩年の大半の時間を講演に費やして訴え続けた。
本書は、この「いちいがしの会」設立10周年を機に、後藤の講演録をメッセージとしてまとめたものである。本書が環境問題に取り組む多くの方々の心に届くことを願ってやまない。
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