江戸時代、上方に生まれた屈指のストーリーテラー、上田秋成と近松門左衛門の傑作を収録。秋成は、人の執念の怖さを怪異小説『雨月物語』に描いた。義兄弟の契りを交わした兄が死霊となって会いに来る「菊花の約」、長期の不在の後、帰郷した夫が妻の幽霊と一夜を過ごす「浅茅が宿」、不実な夫を恨んで死んだ妻が恐るべき復讐を遂げる「吉備津の釜」、愛する童子の死肉を喰らい鬼となった僧が悟りを得る「青頭巾」の四編を収載。対して近松は、人の心の弱さが生む悲劇を浄瑠璃に語った。遊女買いに店の金を使い込んだ果ての逃避行『冥途の飛脚』、妻と愛人の間で義理と人情の板ばさみとなり、ついに凄惨な心中を遂げる『心中天の網島』を収載。
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