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抑留体験からスターリン主義批判への「前史」――2008年の1月に99歳で亡くなった作家・翻訳家、高杉一郎の主として戦前の改造社時代の伝記。戦後4年間のシベリア抑留生活を余儀なくされた高杉(本名・小川五郎)は、帰還後、戦後記録文学の最高位にあると評される『極光のかげに』をはじめ、『スターリン体験』『征きて還りし兵の記憶』などを生む。亡くなる直前まで行なわれた著者による聞き書きや没後あらたに発見された手紙、高杉著作からの引用など、数々の貴重な裏づけをもとに構成され、描かれる若き日々の姿。高杉はまた、優れた編集者としてのみならず、アグネス・スメドレー『中国の歌ごえ』やフィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』などを訳した翻訳の名手としても知られている。
目次
序 章
(一)若き高杉一郎
(二)伝記について
第一章 「改造」の時代
第一節 中学時代
第二節 改造社の創設
第二章 東京高等師範学校と円本
第一節 築地小劇場とロシア文学
第二節 外国語夏期大学
第三節 中国人留学生たち
第四節 円本
第五節 東京文理科大学への入学と放校
第三章 改造社入社から『文藝』編集者へ
第一節 改造社入社
第二節 雑誌『文藝』創刊
第三節 『文藝』編集部へ
第四節 郭沫若と郁達夫
第四章 日中文学者往復書簡の時代
第一節 一九三七年という時期
第二節 日中文学者往復書簡
第三節 『文藝』と中国人作家たち
《補説》蒋介石と毛沢東の『改造』所収論文
第四節 中野重治
第五節 トーマス・マン「往復書簡」
第六節 スメドレー「馬」と蕭紅「馬房の夜」
第七節 「マサリックを憶ふ」
第五章 ジャーナリストとして
第一節 一九三七年十二月以降
第二節 宮本百合子
第三節 学者・文学者たちとの交流
第四節 トロツキー裁判
第六章 ヨーロッパ文学の翻訳を通して
第一節 一九四〇年の輝き
第二節 「朝鮮文学特集」
第三節 東京文理科大学英文科
第七章 日米戦争の開始から改造社の解散
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