取り寄せ不可
「朝から晩までチャーチルに接してきた結果、妙に愛着を感じるようになりました。その理由に三点ばかりあります。第一はそのかざらない人柄でしょう。不完全な人間として、筆者はチャーチルを身近かに感じました。暴飲暴食、夜更かしに公私混同。恥ずかしげもなく自分の内面をさらけ出す開けっ広げな人間です。炭坑、塹壕、地下鉄での生活に平然なところも気に入りました。隣近所に見つかりそうな男であり、ともに酒を酌みかわしたくなる男です。次に好きになった点はチャーチルの行動力です。大臣職を投げうち、一介の大隊長として最前線に赴いた行動力が好きになりました。匹夫の勇として非難する文献もありましたが、生命の危険性のある戦場への志願です。チャーチルならではの行動でしょう。モスクワのアパートでの台所で、憎みあったスターリンと明け方まで酒を飲む場面に触れました。こんな話は講談や落語の世界では存在するでしょうが、大帝国の宰相が実現したというから驚かざるを得ません。たとえば平壌のアパートで、国交のない日朝の両首脳が酔いつぶれる場面を想像してみてください。国家間の不信感も払拭される思いがします。チャーチルが好きになった三点目はその闘争心です。戦争であれ、植民地の暴動であれ、労働者のゼネストであれ、敵対者へのチャーチルの闘争心は厳しい。相手が悲鳴を上げるまでその手を緩めません。チャーチルが指導する組織内の人間にとって、この闘争心は頼もしさと映るでしょう。」(「あとがき」より)
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