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平凡にひそやかに生きる女たちの心のさざ波……「明るく晴れている海だって始終さざ波はあるもの、それだから海はきらきらと光っている。」――手習いの師匠を営む母と年頃の娘、そのひっそりと平凡な女所帯の哀歓を、洗練された東京言葉の文体で、ユーモアをまじえて描きあげた小説集。明治の文豪・幸田露伴の娘として、父の最晩年の日常を綴った文章で世に出た著者が、一旦の断筆宣言ののち、父の思い出から離れて、初めて本格的に取り組んだ記念碑的作品。
◎村松友視ーー濡れた和紙の束を一枚ずつていねいに剥がしてゆくような手さばきが、幸田文の文章の真骨頂だ。(中略)相手の生活を慮り、相手の気持を気遣ったあげく、その虚しさに落着したとしても、慮りや気遣いをまったく作動させずにいる人生より、一ミリほど贅沢だという余韻が、読後の私には強く残った。――<「解説」より>
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