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ジェンダーの視点でフランス・ロマン主義文学を読み解きながら、
現代の性にかかわる価値観の根源を探ります。
興味深い1冊です。
19世紀フランス・ロマン主義文学において、クルチザンヌ(娼婦)の存在は重要な位置を占めている。とりわけ、アベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』やデュマ・フィスの『椿姫』の主人公の名は、誰でも一度は耳にしたことがあるに違いない。こうした作品は、真実の愛に目覚めた娼婦が悔い改めて苦難の道を歩み、罪を贖って死ぬ恋愛物語として、読者に共感と同情の涙を誘ってきた。しかし、私たちはそれが男性の視点で描かれていることに気づかないことが多い。私たちは実は、男の主人公(または男性作家)の眼を通して、男の抱く理想の女性像をこれらの作品に見出し、そのイメージを共有していたのだ。
では、発想を転換して、女の視点、ジェンダーの観点から見ればどうなるだろうか。本書は、男性の視点に立った従来の解釈とは全く異なる立場から、文学作品を読み直そうとするものである。クルチザンヌが文学に登場する19世紀は、産業革命やブルジョワジーの台頭により、資本主義が確立した時代である。それは、すべてがお金に換算され、「女の肉体」も「商品」として男の手から手へと流通する時代の幕開けであった。このことはまさに、市場主義が推し進められた現代社会のルーツを成している。
私たちの社会の原点である近代社会を描いたフランス・ロマン主義文学の世界に立ち戻って娼婦像を考察することは、現代の女性像の原点にさかのぼることでもあろう。現在、取りざたされることの多いジェンダーに基づく価値観(「男らしさ」「女らしさ」の概念)を考える上でも、本書は一つの足がかりとなろう。ロマン主義的クルチザンヌの分析を通じて、現代につながる諸問題を浮き彫りにするのが本書の狙いでもある。
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