取り寄せ不可
我々は身体(センサ、アクチュエータ、力学構造)を介して行動を出力し、環境を知覚する。この行動出力-環境知覚の循環の中で、固有の環境世界を内部ダイナミクス(内部表現)として取り込む。そして、刻々と知覚される環境世界と記憶されている内部ダイナミクスの動的な相互作用から、身体自由度に対する拘束条件が生成され、行動が出力される。我々と異なる身体をもつ昆虫、魚、鳥、哺乳類、さらにはロボットも、それぞれの身体に対応した内部ダイナミクスをもつ。たとえば、高度な超音波感覚機構をもつコウモリと鋭敏な嗅覚をもつイヌは、当然、別の内部モデルを獲得する。このような異なる身体性にもかかわらず、運動・行動の発現には、暗黙的な身体知という意味で共通の獲得原理が存在する。たしかに、高度で複雑な運動・行動を生成するためには、記号演算的な機能が不可欠である。しかし、その背後には、幅広い身体知機能が埋め込まれていなければならない。両者が階層的・機能的に融合して初めて、知的な運動・行動が実現される。
本書は、このような身体知に対してシステム論の観点から解析を試みたものである。工学的実現の側面に留まらず、脳科学・身体性認知科学の両面から系統的に解説している点が特色である。システム科学、ロボティクス、脳科学、認知科学関係の大学学部高学年、大学院生ならびに関連する分野の研究者、技術者を対象としている。
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