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"黄金分割というのは、純粋に数学的に定義された概念である.簡単にいってしまえば、1:(1+√5)/2 という比率、すなわち、黄金比に分割することにすぎないのだが、これが数学的に見ても深く、また豊富な内容をもっているのである.本書にも、黄金分割をめぐる多様な数学的話題が数多く、ていねいに述べられている.
ところが、黄金分割は数学内部の問題にはとどまらない.われわれをとりまく自然の中のそこここに、黄金比とおぼしき比率が見え隠れするのである.植物にも動物にも、よく観察すればいろいろな場所に黄金分割を発見することができる.本書には、これらについても興味深い例が多数示されている.
これは、自然界に調和をもたらす、見えざる神の手によるものか? いや自然の合目的性か? それとも美の本質か? 自然界の奥底に数理を見ようとする西欧的精神はこれを見逃がしてはおかない.黄金分割は、古代ギリシャ、中世・近世ヨーロッパを通じ今日に至るまで、飽くことのない研究対象である.
このような観察からすれば、人の手による造形的創造に黄金分割を応用しようとする人が現われるのは当然である.黄金分割による建築上の作図法を構成する人もいる、黄金比に従って靴の木型を設計する人もいる、印刷面のレイアウトをする人もいる.…
さらに、黄金分割によれば、美を達成することができるという""信徒""も現われる.""過去の巨匠は実は(こっそりと?)黄金分割をもちいたのだ.いや、美しいものの中には必ず黄金分割が隠れているのだ""と信じ切って、建築、絵画、彫刻、音楽、詩歌にそのしるしを探す熱狂的な人々は跡を絶たない.しかし、決め手はなかなか見つからない.だが、これはただの偶然か? 無意識か? 眉唾か? 黄金分割と聞いただけで攻撃的になる人々もいる.著者の一人ボイテルスパッヒャーはドイツ数学啓蒙家の第一人者であるが、このへんのところを冷静に、しかし興味深く記述している.
本書の読者のなかには、数学を好まない方々もおられよう.そのような方々には、まず第9章と第10章を読んでみることをお勧めしたい.細かい点はともかく、おおよその理解はできるだろうし、それだけでも、西欧的造形芸術に対する新しい視点を獲得することができよう.そのうえで、基礎的な積み上げの必要性を悟られ、第1章から読み始めて黄金分割とフィボナッチ数の関係などを知っていただければ幸いである."
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