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「名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」
「伊勢物語」は人間のあらゆる愛のかたちを網羅している愛の教科書だった。
総ルビつき原文 著者オリジナル現代語訳つき
なぜそれほど愛読されたか。
『伊勢物語』が、いわば愛の教科書だからでしょう。雅びの愛、鄙(ひな)の愛、幼い愛、若く無謀な愛、年齢を重ねた愛、真剣な愛、浮薄な愛。以上はいずれも男女間の愛ですが、ほかに友人間、君臣間、母子の情愛もある。それは平安時代の愛の特徴である色好みの魁(さきがけ)であるとともに、万葉時代の相聞(そうもん)の様相も色濃く残しています。そして、それら愛の、相聞の種々相がTPOに合わせて歌に表現されている、歌の教科書でもあります。古来、わが国の教養の中心は詩歌でしたから、身分の上下を問わず、字の読めるほどの男女は『伊勢物語』に親しんだのです。――<「はじめに」より>
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