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近年、ソフトウェア開発においては、品質や生産性もそれ自体重要課題ではあるが、「ソフトウェア開発の工学としての成熟」こそが本質的課題であるとの認識が広まりつつある。プロセスの確立と継続的改善を目指して、いわゆるCMMやSPAといったアセスメントの手法が確立し始め、品質はもとよりさらに幅広い見地から顧客満足度を把握して組織能力を高めようという動きもようやく世界的に広がってきた。そのような中で、ソフトウェアエンジニアリングの一分野としてソフトウェア品質工学あるいはソフトウェア信頼性工学と呼ばれる分野が生まれてきている。
本書は、ソフトウェア品質工学についての基本的な理解のための書である。品質の意味するところに始まり、品質に関して既に幅広く認知されている尺度・モデルを含め、そこで用いられるさまざまな測定技術や分析手法について網羅している。また、先端的ソフトウェア開発組織での利用事例も数多く示される。
おりしも我が国においてもソフトウェアの重要性に鑑み、ソフトウェア開発の基盤技術に関する現場の実状に深く想いを致した、国を挙げての戦略的取組みの必要性が声高に取りざたされるようになった。本書の発行時点では、実証的研究を1つの軸にしたソフトウェアエンジニアリングセンターが、IPA(情報処理機構)の下に発足していることであろう。そこでは、要求工学や設計・開発の課題に対する取り組みと肩を並べ、むしろそれらの活動の基本となる、品質や生産性を含めた現場の実態の定量的把握を助ける枠組みや、基盤の研究、ベースライン・ベンチマーク研究に基づく先進的ソフトウェア開発のベストプラクティス作りとその普及努力が、長期にわたり継続的に行われるはずである。これらのテーマがいずれも尺度とモデルなしには達成できないことは言うまでもないであろう。本書はこのような「時」にふさわしい1冊であると確信する。
一方、高度ソフトウェア技術者の育成も業界と産業界にとって緊急の重要課題であり、同じIPA下のITSS(情報技術スキル標準)センターの下で産学協同の動きが進み始めている。今後の人材育成が企業のみならず大学でも重要になることを考えると、本書はまた、既に外国における前例が示すように、大学における情報工学の基礎教材の一部としての利用も大いに価値をもつだろう。 (監訳者の言葉より抜粋)
[原著StephenH.Kan:MetricsandModelsinSoftwareQualityEngineering、2ndEdition、Addison-Wesley、2003]
(発行元:(株)構造計画研究所、発売元:共立出版)
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