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大牟田市で、世界史上例のない集団赤痢が発生したのは、昭和12年9月のことだった。1週間で患者は1万人に達し、死者は700人にも上った。それだけの大事件でありながら、真相はついに明らかにされなかった。事件は複雑怪奇な経過をたどったが、その背後では恐らく軍部の強い圧力が働いていた。
この事件ひとつとっても、昭和という時代がいかに容易ならざる時代であったかがわかる。昭和は戦争の時代だが、それだけでなく、戦後の経済主義も含めて、結局は明治の近代化路線の矛盾の延長線上にあったと認識できる。福岡の昭和史から日本の近代が見えてくる。
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