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21世紀初頭の今、インターネットに代表されるネットワーク社会が本格的に幕開けしようとしており、このため情報セキュリティ技術の確立が火急の問題となっている。情報セキュリティ技術を底辺から支える「暗号」は、この意味でネットワーク社会の安全を守る鍵としてその重要性が強く認識されている。
本書では新しいタイプの暗号である公開鍵暗号を中心に、解説している。すなわち公開鍵暗号の代表例であるRSA暗号、ElGamal暗号、楕円ElGamal暗号等について例題等を交えて平易に解説するとともに、応用例として、これらを用いたディジタル署名について解説している。
公開鍵暗号の安全性に深くかかわりがある「素因数分解問題」および「離散対数問題」のそれぞれについて代表的な方法を述べている。公開鍵暗号、素因数分解問題等の基本的な暗号手法が容易に理解されるように、「数論」の章に大きなスペースをさいている。セキュリティ技術をはじめとする情報技術について、根底から理解し、応用力をつけるためには、数論、代数曲線論等の数学の知識等を広く備えることが必要である。情報技術の分野において、基礎理論を必ずしも返り見ず、ハードウエア中心に器用さを生かした技術開発を行ってきた我国にとっては、将来非常に不利な状況のもとで、欧米、アジア各国と、数学にしっかり基盤を置く技術の分野で成果を競い合うこととなる。本書ではこのことを踏まえ、「インターネット時代の数学シリーズ」の流れの中で基礎理論とその応用の重要性を強く意識して記述している。さらに、暗号手法の中で単に理論面だけでなく応用面からも興味を集めている鍵共有法あるいは放送型コンテンツ配信等における鍵配布法、不正追跡法等について、斬新な手法を紹介し、若手研究者・技術者の創造への強い関心をそそるよう記述に努めている。
新しいタイプの公開鍵暗号に対し、従来型の暗号である秘密鍵暗号については、近年世界的な公募の中で採用されたAES暗号について述べている。形だけの記述にとどまることを避けるため、AES暗号を、秘密鍵暗号の代表であったDES暗号とこれに対して加えられた攻撃法を踏まえて登場した暗号として捉えて記述している。
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