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失明、孤独、自殺未遂、10年の放浪、そして波止場へ…。常に社会の最底辺に身を置き、働きながら読書と思索を続け、独学によって思想を築きあげた「沖仲士の哲学者」ホッファーの自伝。
港湾労働者にして哲学者、ハンナ・アレントの友人にして中上健次が愛した思索者エリック・ホッファー。失明、両親の死と孤独、自殺未遂、10年にわたる放浪、そして労働と思索の日々……。1920年、30年代のアメリカの貧民街、農場、鉱山を舞台に、苛酷な運命に翻弄されながらも社会の最底辺で生きぬいた経験と、自身をとりまく個性あふれる人々との出会いと別れ、そして生きることの意味を綴った比類なき自伝的回想。
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彼の人生そのものが、これほど数奇な人生があろうかと思わせるほど、波乱に富んでいるが、それ以上に面白いのが、彼がいろんなところで出会った、数々の特異な社会的不適応者たちの語る自分の人生である。……その一つ一つが、まるで極上の短篇小説以上の仕上がりになっている。……文章の細部に至るまで刺激的な本だ。(立花隆)
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「生きる」ことに真摯であるということは、これほどまで波乱に満ちた人生を送るということなのか。本書は、数奇な運命をたどりつつ独自の思想を築きあげた哲学者エリック・ホッファーの自伝である。
7歳で失明、15歳で突然視力を回復。18歳の時に天涯孤独となり、28歳で自殺未遂。「私は死ななかった。だがその日曜日、労働者は死に、放浪者が誕生したのである」という彼は、10年に及ぶ放浪生活へ踏み出し、数々の出会いと別れを選び取りながら、劇的な生涯を送ることになる。
トマトの収穫、ホップ摘み、砂金発掘などの季節労働。そのかたわらで、化学、数学、鉱物学などあらゆる学問にまい進し、読書と思索を重ねていく日々。そんなある日、彼は町のレストランで大学教授と出会い、これを機にドイツ語翻訳や研究の手助けなどのアルバイトをはじめる。あまりに研究熱心な彼に、教授は研究所での職を用意してくれるのだが、「本能的にまだ落ち着くべきときではないと感じた」彼は、ふらりと季節労働者の生活へ戻ってしまうのだ。
「慣れ親しむことは、生の刃先を鈍らせる。おそらくこの世界において永遠のよそ者であること、他の惑星からの訪問者であることが芸術家の証なのであろう」。自己と徹底的に対峙し、自己欺瞞と戦いつづけたエリック・ホッファー。まず学ぶべきなのは「学問」そのものではなく、彼が貫いた学問への、そして、人生への「姿勢」かもしれない。(高橋美帆)
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