ハイエクの経済学

ハイエクの経済学

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出版社
学文社
著者名
ジェラルド・ロイ・スティール , 渡部茂
価格
3,300円(本体3,000円+税)
発行年月
2001年9月
判型
A5
ISBN
9784762010668

本書は『ハイエクの経済学』ということで、原著者のスティールは、
ハイエクの専門的な経済研究(主流派経済学のカテゴリーからすれば)である景気変動、
資本、貨幣と価格などの問題にかなりのページを割いているが、
それでも、そうした問題に関するハイエクの理解の底辺に流れている彼の社会・経済哲学を重視して、
その分析にそれと同等以上の力を注いでいる点は注目されなければならない。
なぜなら、ハイエクのライフワークは人間行為と自由社会、
あるいはプラクシオロジーと自生的秩序の統一的な理論を打ち立てることにあり、
60年以上にわたって、経済学から、認識論、法学、政治学、心理学など多岐にわたる書物を書き残し、
しかもその全分野に共通の理解が見られるからである。
すなわち、人間社会の伝統、慣習、制度といったものは人間の合理的・意識的な設計の産物ではなく、
無数の個人・集団の行為の意図せざる結果として、自生的に形成されてきたものである、というのがそれである。
本質的に競争的なプロセスに基づくかぎり、人間の事象は自然な秩序を生み出すのである。
このような自生的秩序観、そしてそれを生み出す個人的自由、一般的ルール、
市場プロセスなどがハイエク経済学の基盤にあり、すべての研究はそこから出発しているため、
まずそれらの問題に取り組むことがハイエク経済学の理解の第一歩となるのである。
すでに述べたように、近年、自由社会といわれる多くの国において、行き過ぎた干渉主義、
行政の肥大化、財政の硬直化などが見られるが、それは安易な科学主義や設計主義的合理主義の跋扈の結果であり、
もしそれが経済全体の行き詰まりや閉塞感を生み出している大きな要因であるとしたなら、
われわれがハイエクから学ぶべきことはきわめて多いといわざるをえない。
本書はハイエク経済学をハイエクの社会哲学体系全体から捉えた、
きわめて包括的にして重要なハイエク経済学研究書であるとともに、またその政策的含意をも伝える貴重な書物である。

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