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福祉先進国で働く作業療法士の現場レポート
「ええっ、また組織の変更なの? この間までコミューンの管轄だったじゃないの……もうギブアップだわ……!!」
ソーシャルカウンセラーのマルガレータが本当にあきれたとばかりに肩をすくめて見せた。私も、例え不況でスウェーデンの財政立て直しのためとはいえ、頻繁な現状変革にいいかげんうんざりしている。
在住30年になる私は今、日本人でありながら作業療法士としてスウェーデン人と共に医療福祉に従事している。新しく設立されたスコーネ地方自治体から25年の勤続功労賞も受けとった。障害児教育に携わり、作業療法士の資格も取り、青少年のリハビリをしている念願のハビリテーリングセンターに勤め、あっという間の日々だったように思う。
高福祉国スウェーデンの内側は一体どうなっているのだろうか? 日本からたくさんの視察団が押し寄せて来てはスウェーデンの医療福祉を学んで帰って行く。どこを見学しても医療チームには作業療法士(OT)がかかわっている。果たして彼らは作業療法士の仕事をちゃんと理解してくれただろうか?
作業療法士は、患者の障害面ばかりをみるのではなく、患者の障害面ばかりをみるのではなく、患者の全体像をも見極めて治療訓練して行く。指の機能訓練のために一緒にピアノを弾いたり、水上スキーをしたり、カヌーキャンプをしたりとスウェーデンならではの作業療法が楽しめる。またハビリテーリングセンターだけの治療や訓練だけではなく、学校や自宅への出張サービスもするし、コミューンの建築課の人と協力して家屋の改造案も出す。一日として同じ日はなくバリエーションのある人間相手の仕事で非常に面白い。
だがスウェーデン人と移民人との狭間で日本文化を背負っている私は往々にしてどう対処していけばよいのか分からない出来事にであう。また変革の波に襲われてスタッフ一同右往左往してしまうのは否めない。
スウェーデンという自由と平等の国で仕事が出来る楽しさ、その反面大変なことも……。福祉先進国で作業療法士として働く現場から、21世紀の日本の福祉行政に少しでも役立てれば幸いである。
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