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「存在と時間」完全版
20世紀最大の哲学書という評価もよくされているハイデガー「存在と時間」を、当初は上巻とされていた既刊部だけでなく、結局出版されずに終わった下巻にある程度相当する講義録「現象学の根本問題」(2010年に筆者監訳が作品社より刊行)などをヒントに、ハイデガーが当初構想していたであろう完全版の「存在と時間」に迫る、ハイデガーの本意は何であったのか、何故出版も講義もされず仕舞いで終わってしまったのかを考察している一冊になります。
講義録「現象学の根本問題」を紐解くことで巷で言われる実存哲学家としてのハイデガーだけではなく、アリストテレス前後から現代に至るまでの哲学史の大家としてのハイデガーにも迫っています。
個人的には、書籍の形でも講義録の形でも完成することが無かった最も謎めいている第一部第三編「時間と存在」に関する考察について、生物学や心理学の知見を踏まえて、人間が動物と決定的に異なるのは生まれ持った環境条件から(自力で)脱し得ることや過去や未来との繋がりを持ったうえで生きる存在であるといった記述は、哲学や倫理学の根本命題ともいえる「人間はどうあるべきか」について多大なヒントを与えてくれる知見であり、哲学専攻の方だけでなく、例えば心理学や精神医学を専門とする方々にももっと読んでほしいと思いました。
既刊部だけでも多大な影響力を持っていた「存在と時間」が、さらなる影響をもたらしていた可能性もあった、その意味での大変な野心家としてのハイデガー(一方で結局ためらって下巻刊行を断念した臆病さも併せ持つハイデガー)に対する考察も見事でした。何故今でも「存在と時間」が重要とされているのかが良く分かった気がします。
私は哲学専攻ではなく文系ですらない理工系専攻で、せいぜい高校倫理を学んだ程度でしかありませんが、同著者の「反哲学入門」(新潮文庫)を読み終えた後であれば、十分に読破は可能かと思います。
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