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人類誕生から混沌の現代へ、壮大なスケールで描く民族と文明の興亡。新たなアフリカ像を提示し、世界史の読み直しを迫る必読の歴史書!
[「浮遊するアイデンティティ」の可能性]──エチオピアでは、単一のネイションを前提としない国家が成立した。1991年に政権の座についた新政府は、徹底した多元主義政策を推進し、93年にはエリトリアの分離独立を円満に承認した。94年に制定された憲法では、各民族に分離独立の権利を(名目的ではなく)保障した。国家は緩やかな統合体となったのである。これは近代市民社会の国家観と訣別した。新たな国家形態の実験でもある。こうした緩やかで単一でないアイデンティティは、実のところ、アフリカ社会が長年つくりあげてきた社会編成の原理でもある。それは柔軟で多元的なアイデンティティに基づく社会と言ってもよい。……
アフリカの柔軟で多元的なアイデンティティを評して、「浮遊するアイデンティティ」と呼んだ人類学者がいたが、単一のアイデンティティを強要する国家や民族という集団同士の殺戮や対立を忌避するためには、浮遊する柔軟なアイデンティティが必要となるだろう。アフリカ社会にはこうした可能性が秘められているのである。──本書より
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