孟嘗君 5

孟嘗君

取り寄せ不可

出版社
講談社
著者名
宮城谷昌光
価格
1,708円(本体1,553円+税)
発行年月
1995年11月
判型
B6
ISBN
9784062078962

【新たな宮城谷伝説、完結】
高きを求める英知と愛の生涯!いま函谷関(かんこくかん)の暁闇を破る者は?人間の大いなる心の成長を風韻高く描ききった文字通り最高の名品!

白圭(はくけい)は微笑していた。「文どのか」涸(か)れた声ではない。いのちのうるおいが残っている声である。「父上――」田文(でんぶん)は白圭の手をさぐった。その手は乾いていた。自分を大きくしてくれた手は、この手だ、とおもうと田文は涙がとまらなくなった。白圭はしみじみと田文をみている。「文どの、人生はたやすいな」「そうでしょうか」「そうよ……。人を助ければ、自分が助かる。それだけのことだ。わしは文どのを助けたおかげで、こういう生きかたができた。礼を言わねばならぬ」「文こそ、父上に、その数十倍の礼を申さねばなりません」「いや、そうではない。助けてくれた人に礼をいうより、助けてあげた人に礼をいうものだ。文どのにいいたかったのはそれよ」白圭はそれから洛芭(らくは)や斉召(せいしょう)などに顔をむけ、――田文がいちど別室にさがったわずかなあいだに、息をひきとった。――本文・函谷関から

お気に入りカテゴリ

よく利用するジャンルを設定できます。

≫ 設定

カテゴリ

「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。

page top