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内海(ラグーナ)に浮かぶ「アドリア海の花嫁」。四季折々の呼吸がたちのぼる大運河(カナル・グランデ)、路地(カッレ)に感じる街の体温、光と闇を彩る祝祭(フエスタ)。足で織り五感でつかむ、水の都へ道案内。
獅子の帰還――セレモニーを行うのに、これ以上の舞台はない。……広場の東側には壮麗なゴシック様式の総督宮殿、西側には古典的にマルチアーナ図書館が建つ。共和国時代とまったく同じ趣向で設営された演劇空間に我々はいるのだ。紐が引かれ、白い布が移動して、獅子の姿が現れてきた。ところがいかにもイタリアだ。布が引っ掛かって動かなくなってしまった。いささか慌てて逆に引っ張ってみても、うまくいかない。人々の間に溜め息がもれる。ヴェネツィアの未来に暗雲がただよいかけたその時、紐を切ったことによって、白布は無事にはずれ、獅子の美しい姿が円柱の上に浮き上がったのだ。我がヴェネツィアの象徴は拍手とともに元の位置に戻った。――本書より
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