懐風藻の詩と文

懐風藻の詩と文

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出版社
汲古書院
著者名
川上萌実
価格
7,700円(本体7,000円+税)
発行年月
2023年3月
判型
A5
ISBN
9784762936838

【結語より】(抜粋)
 本書では、『懐風藻』について、三部にわたり包括的な考察を行った。
 第一部「詩語をめぐって」の第一章「『懐風藻』の用例未見語から見る日本漢詩の発展」では、「用 例未見語」(先行する用例や、同時代の用例が漢籍にないもの)と定義した出典不明語を分類し、詩語の問題を整理・総括した。……第二章「詩作の実態――『遊仙窟』と『千字文』の利用から――」では、特に『遊仙窟』や『千字文』を例にとり、『懐風藻』の詩作の実態解明において幅広い資料の検討が必要であることを明らかにした。
 第二部「人物伝をめぐって」では、『懐風藻』の内容を検討し、『懐風藻』を総集として捉えたとき、その構成において人物伝が存在することの意味(編纂上の意図)を考察した。現在、『懐風藻』研究の 最も大きな問題点は、収録された詩については注釈・考察が行われているのに対して、散文部分に関する研究が不十分な点である。詩については、調査対象に多少の偏りがあるとはいえ、ある程度の出典調査が蓄積されているのに対して、散文部分についてはそもそも語彙・表現の出典も十分に精査されていない。このような現状を踏まえ、まずは人物伝について基礎的な注釈・研究を行う必要を感じ、調査を行なった。……第二章「人物伝に見られる唐代総集の影響と独自性」では、『懐風藻』に見られる詩人別の配列が多くの唐人選唐詩と共通することを踏まえ、一部の唐人選唐詩に見られる詩人評(『河岳英霊集』の篇額など)と人物伝の共通点を示した。
 第三部「序と書名をめぐって」では、第二部までの考察を踏まえ、『文選』との比較とは異なる観点から、序と書名について考察した。第一章では、『懐風藻』の序における収録詩の引用方法を『文選』と比較し、共通点と相違点について述べた上で、編纂動機について、唐人選唐詩と共通することを指摘した。序については、古くから文選との類似が指摘されてきたが、近年では唐代作品との類似を指摘する論考も散見する。本稿ではそれらを踏まえ、新たな観点から唐人選唐詩との関連を探り、『懐風藻』がいかなる作品の影響、時代背景のもとに作られたものなのか考察した。第二章では、書名に関する再検討を行なった。……書名については、唐人選唐詩との比較という新たな観点から序を含めた調査を行い、従来の『懐風藻』の書名考証を再検討する必要性を提示した。
 以上、『懐風藻』全体の検証を通して、その編纂意図の解明を目指したのが本稿である。

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