再分配のエスノグラフィ

国立民族学博物館論集

再分配のエスノグラフィ

取り寄せ不可

出版社
悠書館
著者名
浜田明範
価格
3,080円(本体2,800円+税)
発行年月
2019年4月
判型
A5
ISBN
9784865820362

グローバリゼーションの進展とともに拡大した社会的・経済的格差を是正するための方策としての再分配の、世界各地における実践の実態をリサーチすることを通して、それぞれの集団や民族、国家の特徴を明らかにする試み。
――なぜいま再分配の人類学なのか? 2010年代、経済政策としての富の再分配の重要性を指摘し、最低賃金 の上昇を旗印にした社会運動が国内外で注目され、支持を集めた。いっぽう、人類学における「再分配」は、市場とは異なるものであり、市場に対抗するための手段であるという見方が提示されてきた。所得再分配政策としての富の再分配と比較すると、国民国家を前提としているかどうかや、格差の是正を志向しているかどうかなど大きく異なる点もあるが、共通している部分もある。本書では、人類学で古典的に議論されてきた、より小規模の再分配的な実践だけではなく、所得再分配政策における富の再分配とその影響についても射程に収める。再分配的な実践の多様性を提示するとともに、個々の地域や集団、さらに国家における実践の特徴を抉り出し、人類学において再分配について議論する現代的な意味を明らかにする。第1章では、フィンランドの高齢者福祉における緊急通報システムの利用状況について分析し、高齢者がサービスを利用するかどうかの判断にサービスの提供者や他の利用者についての想像力が含みこまれ、個々の選択に倫理が介在しうる余地があることを指摘する。第2章では沖縄のある離島を舞台に、国を単位とする再分配制度のひとつである介護保険制度の導入が、どのように地域レベルでの人間関係を再編し、どのような集団を立ち上げてきたのかに注目する。第3章は、欧米の議論を参照しながらも、それとは異なる形で再分配と集団の関係や「社会的なもの」と「政治的なもの」の関係が展開されてきたインドの状況を解きほぐす。第4章は、メラネシアにおける儀礼的交換と再分配の関係について議論している。第5章では、ガーナでの共食という再分配的な実践と「世帯」という集団の関係を検討する。第6章では、ミクロネシア・ポーンペイ島を調査し、世帯よりも規模の大きい集団である(首長国内の)村における再分配的な実践について議論する。第7章では、ガーナ南部で小王主催の集金パーティーにおいてどのようなやり方で貨幣が集められているのかを検討することで、そこに立ち現れる様々なタイプの集団の多様性と複雑な関係性を明らかにする。
日本、インド、アフリカ、ヨーロッパ、ミクロネシア、メラネシアと、世界各地における再分配の諸相を具体的に描くことにより、貨幣経済の原理が世界中を貫徹する中で、それとは別の原理が、どのような形で機能しているか、また機能しうるのかを問い返す。

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