アラブ君主制国家の存立基盤

研究双書

アラブ君主制国家の存立基盤

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出版社
アジア経済研究所
著者名
石黒大岳
価格
2,970円(本体2,700円+税)
発行年月
2017年10月
判型
A5
ISBN
9784258046300

「アラブの春」と称される政治変動は、アラブ諸国の国内政治と社会のあり方はもとより、地域をめぐる政治状況に多大な変化と混乱をもたらした。情勢が混迷を深めるなかで際立ったのは、アラブ君主制8 カ国(サウジアラビア、クウェート、バハレーン、カタル、アラブ首長国連邦[UAE]、オマーン、ヨルダン、モロッコ)の体制の安定性であった。本書は、アラブ君主制諸国が示した政治変動に対する耐性に着目し、体制の安定性が維持されているメカニズムの解明をめざしたものである。
アラブ君主制の存続と崩壊は、サミュエル・ハンティントンが近代化とともに君主制が直面する「国王のジレンマ」問題を論じて以来、中東政治研究において主要なテーマのひとつである。伝統的な宗教や部族社会の紐帯に着目した文化的アプローチや、国王の超越性や国家と社会の関係に着目した制度的アプローチ、石油や外国からの援助などのレント収入や政治的な地位・権力など恩恵の配分に着目した資源配分アプローチに整理される多様な観点から分析がなされ、政治体制の存続と崩壊を分ける要因やメカニズムの解明が進んでいる。しかし、そこに君主制ならではの特性を見いだすことは難しい。
君主制ならではの特性を浮き彫りにするために、本書は、複合的なアプローチを採用し、君主が主張する統治の正統性原理と、それに対する国民からの主体的な受容のあり方に焦点を当てている。国民と君主をつなぐ多様なチャンネルに着目し、君主制の枠組みのなかで、国民が主体的に関与し得る制度について検討し、国民が君主制にいかなる存在意義を見いだしているのかを明らかにするとともに、君主制の安定性について分析するための新たな独立変数ないし媒介変数を提示したい。

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